昭和ガラスシリーズ第4弾です。
昭和の家でよく見かけた“あのガラス”、覚えていますか?
玄関ドアの横で、夕日に照らされてキラキラと、それでいて重厚に輝くガラスがありました。

そのガラス、ただの「玄関のやつ」じゃないんです。
名前を型板ガラス「石垣」といいます。
当時の家主たちが競うようにこの柄を選んだのは、
そこが家族の格式を示す「城門」だったからかもしれません。
けれども、その立派な石垣模様のすぐ後ろには、
家族が脱ぎ散らかしたサンダルや、
少し錆びた傘立てがうっすらと透けて見えていました。
高級感と、隠しきれない生活感。
今回は、そんな昭和の「見栄と愛おしさ」が詰まったガラスの物語です。
なぜ昭和型板ガラス「石垣」とは?家の顔である玄関に選ばれた理由
隠しながら見せるという発想
「石垣」は、
不規則な凹凸で石垣のような模様を作る型板ガラスです。
外からは中がぼやけて見え、
プライバシーをしっかり守りつつ、光は室内に通す。
そうやって玄関が暗くなるのを防ぐことができました。
つまり、石垣ガラスは「目隠し効果と装飾性を兼ねた実用的なガラス」です。
高度経済成長期に流行した安定感のあるデザイン
当時、「石垣」は、和風の木製建具からモダンな玄関ドアまで幅広くマッチ。
和洋折衷のようでありながら凡庸性が高いのも、
人気のひとつででした。
長く住む大事な家だからこそ、飽きのこないデザインが重宝されたのかもしれません。
こうしたレトロな建物は、万田坑のような場所でも見ることができます。
▶ 万田坑でのソロ活記事はこちら
実用的な防犯・耐久性
当時の型板ガラスは厚みが約4mmあり、比較的丈夫な造り。
そのため、人の出入りが多く、
防犯性と耐久性が求められる玄関の窓や、玄関ドアに
「光を取り入れる飾りガラス」として好まれました。
現在の防犯ガラスに通じるものもありますね。
「作れば作るほど売れた」高度成長期狂騒曲。
「石垣」などの型板ガラスが爆発的に普及した背景には、
高度経済成長期(1950年代半ば〜1970年代初頭)特有の爆発的な需要がありました。
そう、人口増加と共にやって来た空前の持ち家ブーム。
家が建つたびに窓や玄関のガラスが必要になるため、
メーカーはフル稼働で生産していました。
この頃って本当にいい時代だったんだなあ……。
持ち家ブームに踊らされたいしがきの派生、
「石目」の記事はこちらから読めます。
石垣は「石目模様」の代表格ガラス
昭和30年代〜40年代、各メーカーが競って新柄を出す中、
日本板硝子の「石垣」はその名の通り「石垣」を模したランダムな凹凸がポイント。
「和にも洋にも合う」として爆発的に普及しました。
「いしがき」があまりに売れたため、
その波に乗りたい他社メーカーもこぞってパクリ……
いえ、リスペクトが生んだ「似て非なる」
バリエーションが続々と登場しました。
「石目」の他に「つづれ」や「アサオリ」なども、この石目模様に分類されます。
昭和ガラスにはこうした個性豊かな模様がいくつもあり、
型板ガラス「らんまん」の記事でもその魅力を紹介しています。
他の昭和ガラスについては、型板ガラス「蘭満(らんまん)」の記事でも紹介しています。
デザインへの強い憧れ(型模様戦争)
当時は
「一生懸命働けば、誰もが素敵な家を建てて豊かに暮らせる」
と信じられていた今思えば夢のような時代です。
メーカー各社は、消費者の
「素敵な家を建てたい」
という夢に応えるため、毎年のように競って新しいデザインを投入していました。
需要と供給のベストマッチを追い求めた結果、
たくさんの種類の型板ガラスが誕生しました。
「ガラスがある生活」が豊かさの象徴
明治時代まではごく限られた施設でしか使われなかった窓ガラス。
戦後の技術革新で大量生産できるようになり、ようやく一般庶民の手に届くようになりました。
新築の玄関に「石垣」のような最新のデザインガラスをはめ込むこと。
当時の家族にとって豊かさを表現するには最適でした。
私のおぼろげな記憶だと、ちょっとおしゃれな住宅地に住んでいるクラスメイトの家の玄関は
高確率で「石垣」だったような…
まさに“玄関は家の顔“だったのです。
厚型ガラスの先駆け
当時の型板ガラスは2mm厚が主流でしたが、
「石垣」
は玄関ドアなど大きな面積でも耐えられる4mm厚のラインナップを主力にしていました。
この「丈夫でプライバシーも守れる厚手ガラス」という規格自体が、
その後の玄関ガラスの標準(元祖的な存在)となりました。
「いしがき」が生まれなかったら、
きっと今の玄関の彩りは存在しなかったのかもしれません。
まとめ|今、私たちがこの昭和ガラスに「名前」を取り戻してあげる意味
昭和に作られた型板ガラスたち。
家に光を取り込み、プライバシーを守り、
目で見て住んでいる人たちを楽しませてくれました。
まさに縁の下の力持ち。
そして、ずっと見ていられる不思議な模様。
だけどそのガラスたちの「名前」を知っている人はとても少ない。
今、少しずつ消えていくであろう昭和の型板ガラス。
もし、実家に帰って珍しい模様のガラスを見かけたら、
名前を見つけてあげてください。
きっとガラスたちも喜んでくれますよ。
身近な場所で、ぜひ探してみてください。
昭和ガラスは、特別な場所だけでなく、身近な場所にも残っています。
そんな風景を探しに出かけるのも楽しいですよ。
▶相島でのソロ散歩の記事はこちら

