3年ぶりの博多区美野島。今、昭和ガラスの風景を記録しておきたかった理由
福岡市博多区にある
「美野島」
を最後に歩いたのは、たしか3年前のこと。
あのころも、
「なんとなく、早めに記録しておかないと」
という予感はありました。
再開発の波は、あちこちで静かに、でも確実に、古い町並みを塗り替えていくから。
今回重い腰を上げたのも、まさにその「予感」に突き動かされたからです。
目的は、昭和の窓ガラス——いわゆる
「昭和ガラス」が残る家屋を写真に収めること。
型板ガラスとも呼ばれる、あのゆらゆらと光を散らす不思議な模様たち。
「つた」「古都」「銀河」……。
昭和の住宅には当たり前のように存在していた風景も、今やじわじわと失われつつあります。
梅雨入り前の晴れた午前中。
私はスマホを手に、ひとりで歩き出しました。
路地に入った瞬間の違和感。お気に入りの場所が消えていた
中洲川端からキャナル、さらに住吉方面へ。
超方向音痴な私にしては珍しく、迷わず目的地までたどり着けました。
ところが、細い路地に入った途端、
ドスンドスンという鈍い音と共に「ガリガリ」という重機の音が響いてきたのです。
嫌な予感。
路地の先に立つ交通警備員のおじさん。
その奥に見える工事用の囲い。
——ああ、やっぱり。

そこは私のお気に入りだった一角でした。
3年前に訪れたときは、年季の入った木造家屋に人が住み、生活の匂いがしていました。

けれど今、そこにあったはずの家も、土壁が続く美しい並びも、きれいさっぱり消えていました。
いつかこういう日が来ることは分かっていた。でも、やっぱりショック。
同時に、
「そうだよね、やっぱりそうなるよね」
という妙な納得感とあきらめが混ざり合います。
博多駅にも近い美野島は、利便性でいえば一等地。
古い建物が残っているほうが、むしろ奇跡なのかもしれない。
分かってはいるけれど、心がチクりと痛む光景でした。
それでも残っていた、昭和型板ガラスの輝き
解体された一角に後ろ髪を引かれながらも、路地をひとつずつ丁寧に歩いていくと——見つけました。

葉っぱが絡み合うような、繊細なつる草模様の「つた」。
光が当たると、ガラスの向こう側がやわらかくぼやけて、なんとも言えない奥行きが生まれます。
他にも「古都」や「夜空」と思われるパターンを複数発見しました。
「夜空」なんて、誰が名付けたんでしょう。
昭和のデザイナーたちのロマンチックな感性に、いつも脱帽してしまいます。
そしてこの日、一番感動したのがこちら。

もしかすると昔は美容院やブティックだったのかもしれません。
おしゃれな曲線の鉄格子と、昭和ガラス「からたち」の組み合わせが絶妙で。
錆びた鉄格子の色味さえも美しく、しばらくその場を立ち去ることができませんでした。
博多区美野島から住吉へ。新旧が混在する、穴場の路地歩き
美野島をひととおり歩いたあと、お隣の「住吉エリア」へ。

住吉は、新しいマンションと古い民家がぽつぽつと共存している不思議な街です。
観光地化されていないからこそ、ふらりとひとりで歩くのにちょうどいい。
細い路地、木製の塀、何気なく残された古い家屋。
気づけばかなりの時間を、ファインダー越しにこの街と対話することに費やしていました。
女版・孤独のグルメ。サラリーマンに混じってホルモン定食を完食!
歩いているうちにお腹がペコペコになり、住吉で見つけた一軒の定食屋さんへ。
サラリーマンのおじさんたちが黙々とご飯を食べているカウンターに、女ひとりで飛び込みます。
メニューも見ず、注文したのは「ホルモン定食」。

甘辛いタレが絡んだホルモンと、白いご飯。
この「最強の組み合わせ」を前に、言葉はいりません。
誰に気を遣うこともなく、ただひたすら目の前の料理と向き合う。
「一人でおいしいものを食べる幸せ」。
これこそがソロ活の醍醐味です。
おしゃれなカフェもいいけれど、こういう気取りのない店に自然と入れるのが、大人のひとり歩きの良さですよね。
3時間後、帰り道に「腰」が語りかけてくる現実
気づけば3時間近く歩き回っていました。
夢中でシャッターを切っている間は、疲れも空腹も忘れています。
没頭できる趣味があるのは、本当につくづく幸せなこと。
……ところが。
帰りの電車で座席に腰を下ろした瞬間、腰の奥から「じんわり」と鈍い痛みが上がってきました。
「あ、来た来た……」
これが50代の散策の現実。
筋肉痛が翌々日にピークを迎えるように、体の疲れにも「時差」があるんですよね(笑)。
「なんでこんなに痛いの?」
と首をかしげた数秒後、今日の激走を思い出す。
それでも、また行きたい。
記録しておきたい風景は、まだたくさんあるから。
腰の痛みと折り合いをつけながら、マイペースに続けていこうと思います。
昭和ガラスをきれいに撮るコツ
晴れた日の午前中が狙い目です。
光の当たる角度で模様の表情がガラリと変わります。
そして何より、路地歩きは必ずスニーカーで!
好きなものに夢中になると、人って意外とリミッターが外れてしまいますからね。
探索も楽しいけど、昭和ガラスの世界もおもしろいですよ。


